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教室紹介(フラテ)
2005年度(平成18年3月発行 フラテ92)
解剖発生学講座の主、渡辺雅彦教授の一日は、前夜皆が乾燥棚に放置していった無数のビーカーや試験管を片付けることから始まる。そして事務員の石村知子嬢の淹れてくれるその日最初の珈琲を、教授と清水技官がすっかり飲み終わってしまう頃、ぼつぼつ他のメンバーが集まる。彼らがメールチェックなどをしている隣を、疾風のようにスリッパを鳴らして教授が通り抜ける。電話も鳴らず会議もない実験三昧の週末に想いを馳せつつ、教授室と実験室をシャトル往復しておられるのだ。鋭敏怜悧にして博覧強記の頭脳にはニューロナルネットワークの解明に迫るアイディアが溢れており、高回転する思考回路に追いつかんとして自然に足が速まるのであろうと推察する。
そんなハイスペックな渡辺教授の要求を余裕の微笑を浮かべてこなしてしまう石村嬢は、かつて実験器具を両手に抱えた教授が扉に向かって「開け、ゴマ!」と唱えているのを目撃、以来その茶目振りのトリコとなり絶対の献身を誓っている。仕事に疲れたときは、スクリーンセイバーのフィーゴに見蕩れて身悶えするも、優雅な物腰には一寸の乱れもない。美貌とは裏腹にF1やサッカーやTV「大奥」を愛する石村嬢は、ネズミが逃げても鳩が飛び込んできても沈着冷静、むしろ嬉々として捕獲に乗り出す剛胆さには惚々してしまう。
さて、お昼だ。深谷昌弘助手は愛妻弁当!と僻んでいたところ、卵焼きとおかず詰めはご本人の担当だとか。サスガは善進のため努力を惜しまぬ深谷氏、卵焼きの美しさも惚気っぷりも日々グレードアップしている。お弁当箱の中より整然とした明晰な頭脳には、地球自転速度変化論を始め様々な持論「深谷説」が醸されており、迂闊な我々の隙をつく機知と創見に満ちている。文武両道を旨とする氏は熊拳法の達人でもあるが、最近の悩みは運動不足? しかし冬が来れば優雅に雪と戯れる氏の姿が見られるであろう。
スモーキングタイムになると清水技官と宮崎助手はおもむろに頷き合い、煙のように姿を消す。二人にだけ通じ合うミステリアスな合言葉やハンドサインは好奇心を煽る。しかし現在のところ彼らの本領を知るのは内ヶ島氏と山崎氏に限られている。そう、清水秀美技官は現在大阪で活躍中の「永遠のアイドル」山崎美和子氏が帰還し、一緒に麻雀卓を囲めるのを心待ちにしている。確かな筋の情報によれば、麻雀をしている時の清水技官は キラキラ輝いているという。誰よりも動物を愛する心優しい清水氏の密かな愉しみでもある。
一方、夏は誰よりも団扇が似合っていた宮崎太輔助手は、今日は寝癖と見紛う無造作ヘアがクールに決まっている。電顕選手権でメダルを獲得した職人芸も見事だが、ウィット溢れる言辞のセンスは渡辺研の桂冠詩人に相応しい。筆者の知る限り日本一奥ゆかしい阪神ファンであり、やはり筆者の知る限り日本一奥の深い巨人ファンである高崎先生とも 良好な関係を保っている。しかしハスラーとしては容赦なく、時に内ヶ島氏や山崎氏は身ぐるみ剥がされるらしい。
宮崎助手の隣のデスクで作図に勤しんでいるのはポスドクの山田恵子先生・・・・と思いきや、愛息ヨッシーであった。恵子先生は第二子あっちゃんを背負ったままサンダルの踵を鳴らして実験室を行き来している。それにしてもヨッシーも早や小学生!既に専門書やパソコンの積まれたデスクに座って全く遜色がない。その成長ぶりはしみじみ(若しくは愕然と)感慨深い。 夕刻に出稼ぎ先?の新潟からもう一人のポスドク明石馨姐さんが帰郷、講座は幸福に満たされる。欠食児童たちはいつもたくさん持ってきて下さるお土産に群がり、三浦院生は新たなお茶犬を獲得したようだ。筆者は感動的に美味しい茶豆が忘れられない・・・・が、失礼、これは決してお強請りではなく、是非いつか新潟へお訪ねして、茶豆とお蕎麦で久保田を酌み交わす栄を得たいと密かな野望を暖めているのである。
昼も夜も「馬車馬のように」(c内ヶ島氏)実験を進める三浦会里子院生。色白につぶらな黒い瞳は、人気の絵本「リサとガスパール」のリサの世を忍ぶ仮の姿とも囁かれている。B級アクション映画をこよなく愛する無邪気な彼女にはもう一つ夜の顔がある。旧解剖実習室のある北棟で深夜何処からともなく 流れる妙な音色。その正体は幽霊ではなく、練習場所を求めてさすらうフィドラー三浦氏であった。
バレル研究の未来を担う藤原百合氏は本日苫小牧まで出張中。小児歯科医と大学院の二足の草鞋をはいている彼女 にとって車はまさに足なのだが、最近遂に愛車が耐用限度を超えていまい、新たなパートナーを物色中である。宴席でのエッジィな発言で人気沸騰のバンケットマネージャー藤原氏、くれぐれも安全運転をお願いしたい。
やはり多忙な高崎千尋先生(小児歯科医)は早朝や夜更けに現れる。その可憐な容姿からそのタフな生活振りは想像出来ないが、日帰りの旭川出張の上凶暴な子供に指を噛まれても、アルカイックな微笑は失われず、絆創膏だけが着々と減ってゆく。彼女とジャイアンツについては既述したが、阪神優勝の翌日は流石にその微笑に痛々しさを感じたのは筆者の謬見だろうか?
もう一人の絆創膏大量消費者、岡田理恵子先生(小児歯科医)はお腹の1号2号(仮名)に語りかけつつ マウスの髭を切っている。最近の悩みはベイビーたち(N=2)の名前の選択と実験台にお腹がつかえること。11月現在八ヶ月、人生波瀾万丈の岡田先生に相応しく双子ちゃん、しかも見事に男女一人ずつ。必ずやプーさん好きの岡田先生へのご出産祝にはプー着ぐるみ(2着)をお勧めしたい。
午後十時、暗い廊下をたくさんの注射器を抱えて渡辺教授が歩いてゆく。一目を憚ってかウサギに遠慮してか、免疫は深夜に行うのがポリシーである。常であれば内ヶ島基政氏(身分は本人希望につき不詳)を拉致してゆくのであるが、今夜の氏はデスクに沈没している。居眠りではなく、ポリクリで疲れた身体に鞭打って実験するための英気を養っていると思われる。筆者は内ヶ島氏との約定により彼の正体についてはこれ以上申し上げることが出来ないが、ヒントを挙げると、尊敬する人物は山崎美和子氏。趣味はお午睡、嫌いな食べ物はトマト。氏は天才と呼ばれることを甚だしく厭うが、その頭脳の切れっぷりについてはいずれ歴史が証明してくれるであろう。
文責を負う野村幸院生は姿が見えないようだが、恐らくヴァイオリンの音に誘われて彷徨っているのであろう。こうしてとっぷりと夜も更けた頃、解剖発生学研究室の灯りが消える。
文責:野村