序
当該研究分野では、グルタミン酸受容体のクローニングの幕開けとともに、その脳内遺伝子発現解析に着手し、脳の発達過程においてグルタミン酸受容体サブユニットが発現変化することを世界で初めて明らかにした。その後、グルタミン酸トランスポーターの含め、脳機能発現の舞台となる興奮性シナプス伝達系の分子解剖学的研究を1つの柱としている。もう一つの研究の柱は、GluRδ2遺伝子ノックアウトマウスの形態解析を契機としたシナプス回路発達に関する形態生物学的研究である。これまでの15年間の研究を振り返ると、戦略的に研究を組織し計画的に遂行してきたという訳では決してない。遺伝子クローニングや遺伝子改変マウスなど世界的な生命科学研究の潮流という大枠の中で、キーとなる共同研究者との出会いと相互作用、そして何より研究のそれぞれの段階において登場した研究室の仲間との共同作業や幸運があり、結果的に現在まで至っているというのが、正直な実感である。