2007年度(平成20年3月発行 フラテ94)
解剖発生学分野では、当教室を主宰されている渡辺雅彦教授の下、in situ hybridization法や免疫組織化学的手法をはじめとする形態学的解析手法を駆使することで、脳における神経回路発達機構およびグルタミン酸シグナル伝達機構の解明を目指して日夜奮闘しております。一方、学部教育では、医学を学ぶ上での根幹をなす解剖学の講義・実習を担当しています。解剖学実習があるため学部学生と共に過ごす時間が他の教室と比べて長いせいか、学部学生の方々になじみが深い分野でもあると思います。
2007年の大きな出来事と言えばなんと言っても北研究棟の改修工事に伴う管理棟2階へのラボ引越でしょう。事前準備の段階で引越業者の方から医学部で一、二を争う程ものが多いことを指摘されるなど、前途多難な様相を呈しておりましたが、スタッフを中心として教室員の協力の下なんとか無事に完了することができました。やっとのことで移動して来た引越先の管理棟2階旧生理学実習室は、スペースの狭さに加え、予想外に巨大な蚊が出没(被害多数)する厳しい環境であり、特に何の不自由もなく使用していた今までの環境の良さを噛み締めながら毎日を送っております。しかし、当初は愚痴をこぼしたくなるような環境にも、引越後2ヶ月経った時点では以前と比べて良い点もちらほら出てきており、住めば都という言葉がふと頭に浮かぶ今日この頃です。今年のもう一つの重大な出来事は、当教室のOBで泌尿器科の医師であった柴田隆先生が、4月28日、2年半にも及ぶ闘病生活の後に永眠されたことです。1995年前後の旧第1解剖でグルタミン酸受容体とトランスポーターの発現解析を精力的に行った先生で、その当時一緒に過ごした人にとっては、柴田先生がカラオケで歌ったBurn(ディープパープル)が今でも耳から離れないそうです。ご冥福をお祈りします。
以下、教室員の紹介です。
渡辺 雅彦 (教授)
今年もほぼ年中無休で仕事をされています。実験も着々とこなしており、世界の抗体工場とも言えるほど、新たな抗体を次から次へと作製されていらっしゃいます。年々増え続ける雑務で多忙を極めた状態ですが、お体にはくれぐれも気をつけて下さい。
深谷 昌弘 (助教)
グルタミン酸レセプターおよびその関連分子の局在解析をされています。電子顕微鏡を用いて分子局在を明らかにする技術は神の領域に達していらっしゃいます。一歳を迎えた息子さんの話をされている時は若干目尻が下がり気味です。
宮崎 太輔 (助教)
主に小脳にけるシナプス回路形成について研究されています。特に、小脳登上線維の形態解析については他の追随を許さず、その美しいデータにはいつも感嘆させられます。普段は寡黙ですが、言うべきことは言う、男気のあるかっこいい一面も持ち合わせております。
山崎 美和子 (助教)
現在は宮崎助教と同じく小脳におけるシナプス回路形成を主な研究テーマにされております。形態解析とともに電気生理学的解析もこなせる唯一無二のマルチプレーヤーであり、多彩な能力を発揮していらっしゃいます。引越では大活躍でした。
清水 秀美 (技官)
解剖実習に使用される御遺体の管理や試薬類の調整を担当されています。持ち前のおじいちゃんキャラには磨きがかかっており、キレのあるトークで皆を笑わせてくださいます。
石村 知子 (事務員)
雑多な事務手続きや会計処理などの作業を担当し、ラボ運営を支えて下さっています。暑さをこよなく愛していらっしゃり、肌寒さを実感しつつある最近はテンションが少々下がり気味のようです。
三浦 会里子 (学振特別研究員)
小脳シナプス回路形成におけるカルシニューリンの役割について研究されています。どんな実験でもそつなくこなしてゆく姿が印象的です。研究以外にもオーケストラに参加されるなど、様々な場で活躍されています。
藤原 百合 (院生)
小児歯科から来ており、本業は歯医者さんです。バレルにおけるカルシニューリンの発現局在について解析を進めております。先日、石垣の海でマンタと一緒に泳いで来たそうで、マンタから穏やかな心を分けてもらったようです。
江本 美穂 (院生)
小脳のバンディング構造を形成する分子局在について研究されています。最近導入されたニューマシーンで解析スピードも格段に向上するでしょう。どんな話題でも話せるたぐいまれな能力の持ち主で教室員の心をなごませてくれます。
内ヶ島 基政 (院生)
現在は内在性カンナビノイドシグナル関連分子の局在解析を主な研究テーマにしています。まだまだ研究者はおろか一人間としても未熟者でして、己を磨く毎日です。
湯淺 寛加 (院生)
発達期小脳における内在性カンナビノイドシグナル関連分子の局在解析を行っています。他研究科の講義を多く抱えているようで、おかげで頭よりも足腰が鍛えられたとのことです。
高崎 千尋 (研究生)
小児歯科からいらしている先生で、引き続きバレルの臨界期発達可塑性について研究されています。臨床業務の合間を縫って尚も研究を続けられる姿には頭の下がる思いです。長い年月の費やされた大作が世に出る日も近い?
岡田 理恵子 (研究生)
高崎先生とともにバレルの臨界期発達可塑性について研究されています。しばらく育児休暇でお休みされていましたが、今年から実験を再開されました。双子のお子さんは順調に成長されているようです。
岩倉 淳 (研究生)
今年から当教室で研究を始めることになりました。鍼灸学校の先生をされており、非常に気さくな方でいらっしゃいます。来年からは修士課程の大学院生として当教室で引き続き研究活動を続ける予定です。
その他にも当教室では基礎配属の学部生が、時折顔を出して研究活動を行っております。
来年の4月からは改修後の北棟二階へ再び引っ越す予定です。引越後はきれいな環境で研究ができるとあって今まで以上の研究の進展が期待されます。神経系の研究に興味のある方はもちろんのこと、神経系の美しい姿を見てみたい方や渡辺先生とお酒が飲みたい方も当教室へおいで下さい。教室員一同お待ちしております。
文責:内ヶ島