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教育と研究
教育は骨学、筋学、心臓、消化器系などの講義と骨学実習を、また第一講座とともに肉眼解剖学実習を担当してきた。伊藤昌一教授は、東北大学医学部の在学中に児玉作左衛門先生から中枢神経系の講義を受けたことが契機となり、児玉教授の下でヒト脳灰白結節の研究を開始した。その後、アイヌの形態学・人類学的研究に加わり、アイヌ及びモヨロ貝塚人の頭蓋の研究を精力的に行った。後任の児玉譲次教授は、ヒト胎児頭蓋を構成する頭蓋骨および顔面骨の形態発声をテーマとして研究を行った。平成五年七月、会頭児玉譲次教授のもとで、北海道大学解剖学会員全員の協力を得て 第九十八回日本解剖学会総会が北大構内で開催された。演題数六百題を越える盛会ぶりであった。児玉作左衛門・譲次教授の親子二代が日本解剖学会総会の会頭をつとめたことになる。また児玉作左衛門教授時代から伊藤昌一教授時代に収集されたアイヌ頭蓋および骨格千四体は、昭和五十九年北海道大学医学部に隣接するアイヌ納骨堂に安置された。以来、毎年八月には、学内職員による慰霊式、アイヌによる慰霊祭イチャルパが営まれている。 平成十年に渡辺雅彦教授が就任して以降、講座の研究の方向性は、それまでの人類学的研究から、遺伝子や分子を基盤とした形態生物学・神経解剖学的研究へと大きく変わった。発足当初から、遺伝子発現解析と分子局在解析による分子解剖学的研究と、遺伝子改変マウスの表現型解析による形態生物学的研究の推進を二つの研究戦略として掲げ、以後十一年間着実に研究実績を積み上げている。遺伝子発現解析法として、これまでアイソトープ標識プローブだけであった検出系から非アイソトーププローブによる多重検出系へと展開している。分子局在解析法については、新規抗体作成を強力に推進して二百種類以上の分子に対する特異抗体を保有するに至り、さらにこれを共焦点レーザー顕微鏡による多重標識や包埋前および包埋後免疫電顕に応用して、高感度で高解像度の局在解明を機動的に行っている。表現型解析法も、従来の電子顕微鏡観察に加え、ゴルジ染色、遺伝子銃、画像解析装置等を導入して、解析の精度と鋭度を磨いている。これらの解析技法を駆使して、シナプス機能発現とシナプス回路発達の分子機構の解明を目めざし、さらに小脳を中心としてきたこれまでの研究を、大脳皮質、海馬、大脳基底核、扁桃体、感覚神経核などにも広げていきたいと努力しているのが、現在の教室の研究状況である。一方、教育面では、解剖学講座二分野体制化に伴い、現在は解剖学実習六単位(九十コマ)、解剖発生学(二単位、三十コマ)、神経解剖学(一単位、十五コマ)を担当しており、旧解剖学第一講座と第二講座の合計七名の教員が担当していた講義実習を、現在の解剖発生学分野の教員四名で担当している。